株式会社ウィークエンドホームズ社のホームページで、「建築の輪 リレーインタビュー」というコーナーで取材され、同ホームページに掲載されました。

 
   

第十二篇 環境素材プロデューサー 鮫島 均さん
(株式会社EM MAX 代表取締役社長)


神奈川県川崎市高津区に鮫島さんの会社はあります。自然素材を使った住宅建材、珪藻土やムク材―。数年前にシックハウスが社会問題化し、最近では関心を持つ人も非常に増えてきました。鮫島さんは、健康建材を企画、開発そして販売されています。そんな鮫島さんのふつふつとした想いをお聞きしました。


Hitoshi Samejima
1957 神奈川県川崎市に生まれる
1979 日本大学経済学部産業経営学科
1979 鮫島石油株式会社入社
       (現 株式会社サメジマコーポレーション)
2003 株式会社EM MAX設立

   

 

本社は東急田園都市線高津駅より徒歩10分強のマンションビルの1室にあります。全室EM MAXの製品である「メルシー(珪藻土)」が使われています。

株式会社EM MAXホームページには、“インターネットショールーム”があり珪藻土と桐を感じることが出来ます。「でもインターネットやカタログだけでは限界があります。直接目に触れ、手で触って体感することではじめてお伝えできることがたくさんあります。」。筆者も体感済み

今は見ることも無くなった茅葺屋根の家。同じ川崎市内にある川崎市立民家園には、日本各地の茅葺屋根の古い民家が移築され、保存・展示されています。<日本民家園ホームページより>

「この地域は、東京急行という電鉄がそれこそ“二束三文”で山を買い、開発を行って近代化した街となったのです」。当時、日本最大級と言われた都市開発・住宅地整備プロジェクトでした。

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の公式ホームページ。世界各国からたくさんのアーティストたちが参加しています。これを見れば来年あなたもきっと行きたくなる?

建材を企画、開発している鮫島さん。会社を設立して2年経ちました。鮫島さんが独立した理由はご友人を通じて出会ったボランティア活動団体でした。

「大手商社に努めている友人が40代半ばで突然会社を辞め、環境問題に取り組むボランティア活動を始めました。それまで『そうは言っても世の中やっぱりお金だよ』と思っていたのですが、友人の姿を見て影響されたんです。そして僕自身もボランティア活動に参加し、あることに気付きました。経済社会は"プラマイゼロ"なのではないかと。儲かる人がいれば損をする人もいる競争社会。そうではなく皆が幸せになるようなお金で買えない世界があることを知ったんです。自然を残し次世代に伝えていくことの大切さ。人間1人1人の力は小さいかも知れないけれど、1人1人がやれる範囲のことでも構わない、少しでもやっていくことが大きな力になる。そう悟りました。」

―その想いが今のビジネスにつながるわけですね。
「そうです。人間にも環境にもいい自然素材を広めたかった。でも、衣食住の中で"食"の健康は無農薬だとか無添加だとか言われ世間の関心も以前から高かったのですが、"住"の健康が注目されてきたのはここ最近です。独立前にいた会社では10年前から珪藻土を扱い始めたのですが、当時は皆にけちょんけちょんに言われてね(笑)。数年前、シックハウスという言葉が出始めて "住"の健康もようやく認識され始めてきたと思います。自然で健康的な建材を使って家を建てれば、家の中はとっても健康的な空気になる。本来、一番接しているのは空気なんです。"空気もインテリア"。当社が標榜している言葉です。」

ようやく見直されてきた住まう環境の大切さ。でもシックハウスという存在が出来てしまうほど、何故今まで大切なものが見過ごされて来てしまったのか。その理由として、"戦争に負けた"ということが良くも悪くも影響しているのではないかと鮫島さんは言います。

「この間中越地震があったでしょう。『一番何が欲しいですか』と体育館に避難された方々にインタビューしているテレビのシーンをご覧になりましたか。答えは何だと思います?『仮設住宅が欲しい』ですよ。避難生活の中では、とにかくプライベートの空間が欲しいということなんですね。たとえプレハブでも、仮設住宅は十分心のゆとりになるのです。戦争が終わった日本は、一面焼け野原でした。そんな時、とにかく早く夜露をしのぎたいと人々は思ったはずです。つまり急いで建てるということが最優先事項だった。何でもいいから、とにかく早くて安くて家が建てられればいい。また焼け野原から立ち上がって来た日本人には、きれいなものへの憧れも強かったと思います。大黒柱に支えられた日本古来の古い住宅は造るのに時間もかかります。それよりもベニアやビニールクロスの方が安いし早く出来るし、表面的な見栄えもいいですからね。そうやって日本人は伝統や文化を置いてきちゃったかな、と個人的には思います。きっと伝統を残す余裕もなかったのかも知れませんね。」

「僕が生まれた頃、ここ川崎市宮前区はとても田舎だった。周りは山。家の裏には湧き水が流れててね。よくザリガニを捕って遊んでいました。僕の家も豚も飼っていたし、友達のところは牛を飼っていた。育ったのは茅葺屋根の家でした。昔の家は、日本の夏の風土にとても合うように造られています。軒の長い大屋根や縁側は、光を遮り室内に熱い空気が入って来るのを防ぎます。紙や木で作られた隙間だらけ構造は、風を良く通します。これらは蒸し暑い夏を乗り切るための先人たちの知恵だったのです。」

―昔の日本家屋は、何故夏向きに造られたのでしょうか。
「冬の寒さは火をおこし暖めるという知恵で、何とかしのげたからじゃないでしょうか。火鉢をたく、囲炉裏の周りに集まる・・・。でも暑さをしのぐための知恵は、風通ししかなかったのでしょうね。そもそも暑い空気を入れないようにという発想です。そこでそういった家が造られた。何かウイルスに感染したら薬で対処しましょうという西洋医学的な考え方(=対処療法)ではなく、そもそもウイルスに感染しないようにしましょうという東洋医学的な考え方です。今の日本ももっと東洋医学的な考え方って必要だと思います。"暑いからエアコンをつけよう"ではなく"暑さがこもらない家を創ろう"といったようにね(笑)。」

「人間にはそれぞれの原点があるんです、きっと。それが分からず遠回りをしている人も多いのではないかな。僕がふっとした時に戻る原点は、幼い頃の記憶。育った茅葺屋根の家や日々遊んだ山々と川です。思い出すとふっと安らぎに戻る。今でも生まれ育った山のように緑のある環境は大好きだし、湧き水などを見ると不思議と落ち着く。茅葺屋根とまではいかなくとも、風通しが良くて自然素材でつくられた部屋は、エアコンを入れなくとも本当に心地良いと思います。僕は最近になって原点に戻ってきたのかな。人間ってきっとある年齢になると原点に戻るんじゃないかな、そう思います。」

―ふつふつとした熱い想いを持つ鮫島さん。次回は鮫島さんの原点を振り返りながら、家創りを越えて大切なことを見つめていきます。自然素材の選び方のアドバイスもお伝えします!必見!(聞き手:田村)


 

これが珪藻土を拡大したもの。平均粒径0.05oの土に無数の孔があります(写真中央)更にその孔の内部には炭や活性炭と同じようなもっと細かい孔があいている超多孔質となっているわけですね。

鮫島さんの会社の主力商品、珪藻土の「メルシーシリーズ」が使われたEM MAXショールームです。色や塗り方によって表情もさまざま。

珪藻土の他、桐材なども扱っています。自然の木は、本当に気持ちがいい。EM MAXの桐シリーズで施工された室内。

鮫島さんの会社の前は、こんな風にすだれが。「すだれもパーゴラと同じように部屋の空気を涼しくする作用があります。暑い空気を外側から遮断するんですよ。とにかく熱源から遠くすることが部屋の空気を冷やす方法です」。

一番先頭を切るのが鮫島さん、実は高校時代は球児でした。カッコいいですねぇ。「損得を考えずにただ甲子園を目指した」青春時代は、今でもふとした時に思い出す原点だそう。

息子の涼くん。鮫島さんにとってのもう1つの原点だそうです。休みの日はいつも一緒の仲良し親子の共通テーマは野球です。「純粋に何かに向かっていくという姿が昔の僕とタブっているのかな。そんな姿を見ていると、自分の心も洗われる気がします」。

オリジナル開発の珪藻土商品を扱っている鮫島さん。そんな鮫島さんに珪藻土についての座学を教えてもらいました。

「珪藻土は、そもそも太古の昔に珪藻と言われる植物性プランクトンが化石化したものが原料です。この原石を、これを細かく砕いたものが珪藻土です。昔は七輪などの素材に使われていましたが、最近では建材に使われることが多くなり、ご存知の通り多くの注目を集めています。なぜ注目を集めているかというと部屋の湿度を調節する"調湿機能"というものがあるからなんですね。珪藻土には超微細な穴が開いていて、この穴が湿気を吸い込んだり吐き出したりしてくれるのです。梅雨の時期に湿度が上がればそれを吸い込み、逆に冬の乾燥した時期には吸い込んだ湿気を放出してくれる。つまりエアコンを使わなくとも部屋の湿度を快適に保ってくれるスグレモノなのです。また、珪藻土が持つもう1つの大きな力に、脱臭機能があります。イヤな空気を吸い込み、分解もしてくれるんですよ。」

―最近では珪藻土を使った壁材など多くの商品が開発されていますね。たくさんありすぎてどう選べばいいか分からない・・・。そんな消費者の声もよく耳にします。どういうポイントで選べば良いのでしょう?

「よくあるのは珪藻土に合成化学樹脂(粉末樹脂)などを混ぜて加工しているもの。要するに珪藻土本来が持つ"調湿機能"や"脱臭機能"がなくなってしまっている商品です。これでは意味がありません。選ぶポイントの1つとして、まず、原料自体の機能を確認しましょう。吸放湿率の高い原料を使用しないと、いくら珪藻土を入れても機能しません。例えば、北海道稚内産とかけいそうブレスとか。2つ目に、つなぎの樹脂、つまり合成化学樹脂が入っているかいないかです。以前は、つなぎに合成化学樹脂を使用しましたが、現在は食品のりで固めるメーカーが
出ています。樹脂は3%を超えるともう機能しないので食品のりが良いです。3つ目に、色です。色が白いものは、融薬を使って1000度以上で焼いています。これも調湿機能が失われてしまうからいけません。」

健康建材という側面から家創りに関わるお仕事をされている鮫島さん。快適な暮らしのためには、"協力すること"が欠かせないと言います。

「やっぱりね、住む人も協力しないと快適な空間は出来ないと思いますよ。例えばメンテナンスがちょっと面倒かもしれませんが、パーゴラをつくりそこに植物などを生わせる。これらはとても快適な空間を創り出してくれるんですよ。植物が育って夏場に木陰をつくってくれるのはもちろん、植物が育つエネルギー(=気化熱)が発生して、周りの空気の温度を下げてくれるんです。直射日光は入らないし、冷やされた空気が部屋の中に入って来る。冬は植物は枯れますから光も部屋の中に入ってきますしね。風通しは設計の力で何とか出来ますが、こういう感じで家を創り住んでいけばなおいい生活が出来ると思います。ただあまりメンテナンスが重荷になっちゃうようだと続かない。だからこそ、それが楽しくなるような設計がいいですよね。住む人も喜んで協力したくなるような。」

「本当に人間が心地良いと感じる快適な空間・・・。そこにはある程度の緑がないと駄目なのではないかと思っています。人工的なブロックを積んで塀を造るのだけではなく、緑も植える。緑があることで空気が冷やされるし、何より熱源から遠いほど空気というのは涼しくなるのです。なるべくそういう環境をつくれば、エアコン付けずに余分なエネルギーを使わずに済みます。四季を感じることも出来るでしょう。それが本当の豊かさなんじゃないかと思いますよ。」

―次世代に残していきたいものは何だと考えますか。

「そうですね。自然が一番でしょうか。開発されていない自然の豊かさを伝えていきたいですね。今は余りにも物事を知らなすぎる子供が多いといいますよね。例えば、魚は切り身で泳いでいるとか(笑)。僕らからしたら信じられないような当たり前の知識ですが、それって生きていく知恵だと思うんですよ。それってお金では買えない生きていく力だと思う。そういう生きていく力が持てていれば、自然とお金という力も持てるのではないかと。お金儲けの知恵が先だと、大切な生きていく知恵がないがしろにされてしまうと思います。子供には、自然と触れ合って感性を広げて欲しい。生きていける強さを持ってもらいたいですね。」

―環境問題との出会いからこのビジネスを始められた鮫島さん。自然を大切にするといのは人間の原点のような気がします。あなたにとっての原点は何でしょうか。色々考えさせられるお話、どうも有難うございました。(聞き手:田村)

鮫島さんへの便りはこちら(info@weekend-homes.com)まで。